アミンとは

化学

アミンとは。すぐに説明できなければ、「知っている」とは言えない。

アミンと聞くと、思い出すのは「あみん」。80年代に「待つわ」がヒットしたボーカルユニット「あみん」。実家にレコードがあり、子供のころ何度も聞いた覚えがある。こんなことを言えば明らかに平成生まれでないことがばれてしまうが仕方ない。このグループ名の由来は、あみんのメンバーがファンだったいうさだまさしの曲の中に出てくる架空の喫茶店「安眠(あみん)」からきているそうだ。

化学用語「アミン」の語源は、「アンモニア」と深く結びついている。「アンモニア」は古代エジプトの神、アメン(またはアモン)に由来しており、ラテン語化するときに「アンモニウム」となった。アンモニアという名前は、リビアのアモン神殿近郊で初めて確認されたことに由来する。この神殿の周囲には、長年に渡って堆積し腐敗したカメの糞が大量に存在しており、そこから塩基性の成分である硝酸塩がでてきた。そして、この硝酸塩からアンモニアが生じ、結果的にその名前が付けられた。つまり、化学の「アミン」は、古代の神と自然のプロセスから生まれた言葉である。

19世紀に入り、化学者たちはアンモニア分子から1つ以上の水素を他の基と置換した新たな化合物群を発見した。これらの新しい化合物は、元となるアンモニアに似ていると同時に、いくつかの重要な違いも見られた。そこで、これらの新しい化合物群を表現するために、アンモニアに基を加えたものという意味で「アミン」(amine)と名付けられた。アンモニアの「アミ(Ami)」と、基を表す接尾辞「-ine」(英語では、様々な化学物質を表す際に使われる)の組み合わせに由来している。

アミンは化学的にはアンモニアの水素原子を一つ以上炭化水素基で置換した化合物のことを指す。

アミンは基本的に3つの種類があり、第一級アミン(Primary Amine)は1つ、第二級アミン(Secondary Amine)は2つ、第三級アミン(Tertiary Amine)は3つの炭化水素基でアンモニアの水素を置換したものである。

アミンは強い塩基性を示すのだが、それは窒素原子上の非共有電子対の濃度(電子密度)に関係している。まず酸と塩基について軽く触れておこうと思う。酸と塩基の定義については以下の3つが主なものとして挙げられる。

アレニウスの定義: スウェーデンの化学者Svante Arrheniusによって提唱された定義で、酸は水溶液中でプロトン(H+イオン)を生成し、塩基は水溶液中で水酸化物イオン(OH-イオン)を生成する物質とされる。

ブレンステッド-ローリーの定義: デンマークの化学者Johannes Brønstedとイギリスの化学者Thomas Lowryによって提唱された定義で、酸はプロトンを寄付する物質、塩基はプロトンを受け取る物質とされる。この定義はアレニウスの定義よりも一般化されており、水溶液だけでなく他の溶媒やガス相でも適用できる。

ルイスの定義: アメリカの化学者Gilbert N. Lewisによって提唱された定義で、酸は電子対を受け取る物質、塩基は電子対を寄付する物質とされる。

アミン(アンモニアも含む)の窒素原子には非共有電子対(孤立電子対、ローンペア)が存在する。このローンペアは窒素原子上に電子雲を形成し、この電子雲が電荷が正のプロトンを引き寄せる力となる。

その結果、ローンペアの電子がプロトンに「寄付」される形で、窒素とプロトンが結合する。これは共有結合とよく似ているが、配位結合(coordinate bond)と呼ばれ、2つの原子の一方のみから結合電子が分子軌道に提供される化学結合である。これがアミンが塩基として機能する原理である。

アミンの塩基性は、上述したように窒素原子の非共有電子対の張り出し方、すなわちその電子密度によって決定される。これは周囲の基(R基、つまり炭化水素基)が電子供与性を持つか、電子求引性を持つかによって大きく影響を受ける。

たとえば、メチルアミン(CH3NH2)とアニリン(C6H5NH2)を比較してみよう。メチル基(CH3-)は電子供与性を持つため、メチルアミンの窒素の非共有電子対の電子密度を高め、したがって塩基性を強くする。一方、アニリンでは、ベンゼン環(C6H5-)が電子吸収性を示すため、窒素の非共有電子対の電子密度が低下し、塩基性が弱くなる。

このように、アミンの塩基性は窒素原子に結合した基の電子供与性または求引性によって大きく影響される。

アミンの塩基性は化学、生物学、医学など多くの化学分野で重要な役割を果たしている。アミンの塩基性を理解しておくことは、科学的な知識と技術の進歩への理解を深めるためにも重要である。

参考文献:「大学への橋渡し 有機化学」、「マクマリー有機化学」

コメント

タイトルとURLをコピーしました