イオン結合を利用した治療

メディカル

カリウムは体の細胞が正常に機能するために必要なミネラルで、神経伝達と筋肉の収縮(心筋を含む)に重要な役割を果たしている。しかし、体内のカリウムの濃度が適切な範囲を超えて上昇すると、高カリウム血症という病状を引き起こす可能性がある。この記事ではその治療方法について解説する。

高カリウム血症とは

通常、血液中のカリウムレベルは腎臓によって調節されるが、腎臓の機能が低下するとカリウムの排泄が不足し、血液中のカリウムレベルが上昇する。血液中のカリウム濃度が通常よりも高い状態になると、高カリウム血症(Hyperkalemia)を発症する。

高カリウム血症は体内でのカリウムの分布が変わることで発生することもある。例えば、重度の筋肉損傷、一部の薬物(特に血圧を下げる薬物)、あるいは特定の内分泌疾患などが原因となることがある。

診断は血液検査により行われ、治療は原因となる病状の管理と、血液中のカリウム濃度を下げるための処置(薬物治療、透析など)が行われる。

血液中のカリウム濃度を下げるための処置

高カリウム血症の治療は、その原因となる病状を管理し、血液中のカリウムレベルを下げることが目的である。具体的な治療法は、症状の重さや原因により異なるが、一般的に以下のような処置が挙げられる。

カリウム摂取の制限:食事からのカリウム摂取を制限する。カリウムは主に果物や野菜、肉、乳製品などに含まれている。

カリウム排出の促進:ループ利尿薬などの利尿薬を使って腎臓からのカリウム排出を促進する。

カリウム結合剤の使用:これらの薬物は腸内でカリウムを吸収し、排泄を助ける。例えば、ソディウムポリスチレンスルホネート(SPS)などが使われる。

血液透析:腎臓の機能が著しく低下している場合や、血中カリウムレベルが極めて高い場合には、血液透析が必要となることがある。透析は人工的に血液を浄化し、過剰なカリウムを除去する。

血中カリウムレベルの急速な下降を目指す治療:心臓の問題が危険なレベルである場合や、血中カリウムレベルが非常に高い場合、グルコン酸カルシウム投与やインスリン投与などが行われる。これらの治療は、カリウムを体細胞の中に移動させて血中カリウム濃度を一時的に下げることを目指す。

治療薬に関する特許

「イオン結合ポリマーとその利用(Ion-bonded polymers and their use)」

  One aspect of the present invention is a method for removing potassium ions using a potassium binding polymer composition. In certain embodiments, the potassium binding polymer composition has a high binding capacity and / or high selectivity for potassium binding and does not significantly release bound potassium in the gastrointestinal tract. The polymer composition preferably exhibits selective binding to potassium ions.

引用元:https://patents.google.com/patent/JP4974882B2/en

【訳例】

本発明の一側面は、カリウム結合ポリマー組成物を用いてカリウムイオンを除去する方法である。一部の実施形態では、カリウム結合ポリマー組成物は、カリウム結合に対する高い結合能力および/または高い選択性を有し、腸管内で結合カリウムを有意に放出しない。このポリマー組成物は、好ましくはカリウムイオンに対して選択性的な結合を示す。

新しい治療

高カリウム血症の治療法としては、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムやポリスチレンスルホン酸カルシウムなどの陽イオン交換樹脂製剤の利用が一般的だが、それらがカリウム(K)以外の電解質にも影響を及ぼす可能性がある。

新しい治療法であるジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物は体内で吸収されず、カリウムイオンを選択的に捕捉し、消化管内でカリウムの濃度を低下させて高カリウム血症を改善する。また、この新薬は尿中ナトリウム排泄量に影響を与えないとされている。

軽度の高K血症治療では、K吸着薬であるポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ケイキサレート他)、ポリスチレンスルホン酸カルシウム(カリメート、アーガメイト他)などの陽イオン交換樹脂製剤が薬物療法として使用されているが、これらの樹脂製剤の使用は、K以外の電解質にも影響を及ぼすことが報告されている。

 ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物は、国内初となる体内で吸収されない均一な微細孔構造を有する非ポリマー無機陽イオン交換化合物であり、水分によって膨潤しないという特徴を有する。本薬は、消化管内腔においてKイオンを選択的に捕捉して水素イオンおよびナトリウムイオンと交換することで、Kを糞中に排泄させる。これにより、消化管内腔でのK濃度を低下させ、血清K濃度を低下させることで高K血症を改善する。一方で、尿中ナトリウム排泄量には影響は認められていない。

引用元:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/202005/565526.htm

イオン交換のメカニズム

引用元 Wikipedia

Cross-sections of ZS-9 pores with three different ions (K⁺ = potassium, Na⁺ = sodium, Ca²⁺ = calcium). The specificity for potassium is thought to be caused by the diameter and composition of the pores, which resembles potassium channels.

【訳例】

ZS-9の細孔の断面には3種類の異なるイオン(K⁺ = カリウム、Na⁺ = ナトリウム、Ca²⁺ = カルシウム)が存在する。カリウムに対する特異性は、細孔の直径と組成によるものと考えられており、これはカリウムチャネルを模倣している。

引用元:Wikipedia

これは、ZS-9(ソジウムジルコニウムシクロケイ酸塩)という物質がどのようにカリウムイオンを選択的に結合(あるいは吸着)するか、そのメカニズムを説明している。

ZS-9の細孔の直径と組成が、カリウムイオンと他のイオン(この場合、ナトリウムやカルシウム)との間で選択性を引き起こす要因であるとされている。その特性は、細胞膜を通るカリウムイオンの通路である「カリウムチャネル」に似ている。

この選択性(特異性)により、ZS-9はカリウムイオンを選択的に「吸着」することができ、これが高カリウム血症の治療に利用されるイオン交換の一例となる。

※個人的に調べた内容です。詳しくは専門家にお尋ねください。

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